トロイのヘレン(1955年)







DATE

HELEN OF TROY/アメリカ

監督:ロバート・ワイズ


<主なキャスト>

ヘレン:ロッサナ・ポデスタ
パリス:ジャック・セルナス
アキレス:スタンリー・ベイカー
プリアモス:セドリック・ハードウィック
ユリシーズ:トリン・サッチャー
アンドラステ:ブリジット・バルドー
ヘクター:ハリー・アンドリュース
ポリュドーロス:ロバート・ブラウン
メネラーオス:ニオール・マッギニス
アガメムノン:ロバート・ダグラス
ヘカベー:ノーラ・スウィンバーン
アイネイアース:ロナルド・ルイス
カサンドラ:ジャネット・スコット
アンドロス:エドュアルド・シャネリ
ディオメデス:マーク・ローレンス
エイジャックス:マクスウェル・リード
                 ……etc



目次


『トロイのヘレン(1955年)』の作品解説

キーワード『トロイア戦争(ギリシア神話)』

『トロイのヘレン(1955年)』のストーリー

『トロイのヘレン(1955年)』の感想

こんな作品も・・・



【作品解説】

 日本では1956年2月に劇場公開されたアメリカ映画。ギリシア神話のトロイア戦争の物語をモチーフにしたスぺクタル映画。ギリシア神話のトロイア戦争は神々の思惑入り混じる壮大な物語だが、1955年の「トロイのヘレン」では神話としての要素は排除し、絶世の美女ヘレンとトロイの王子パリスの禁断の愛が招く英雄たちの戦いの物語となっている



【トロイア戦争(ギリシア神話)】

 トロイア戦争はギリシア神話の伝承の一つ。古代ギリシア連合軍と城塞都市イリオス(トロイア)と間で交わされた、神々と数々の英雄が入り混じり戦った10年に及ぶ大戦争である。イリオスは現在のトルコ北西部に存在したといわれる都市。古代ギリシアの時代に、トロイア戦争に関する一大叙事詩環が作られた。ホメロスの「イーリアス」「オデュッセイア」がとりわけ有名。それ以外の叙事詩は断片しか残されていないが梗概は現代にも伝えられている。ギリシア叙事詩の最高傑作とも言われるホメロスの「イーリアス」は紀元前8世紀半ば頃に作られ口述によって伝承されてきた。紀元前6世紀後半のアテナイで文字化されたとされる。今日の形で完成したのは紀元前2世紀のアレクサンドリアでだとされる。

「イーリアス」はトロイア戦争勃発から十年が経過したある日から始まり、イリオスの英雄ヘクトールの葬儀で終わっており、戦争のきっかけとなったパリスの審判や、イリアス陥落のきかっけとなったトロイの木馬は別の叙事詩によって描かれた物語である。トロイア戦争をめぐる叙事詩は、架空の戦争が題材になっているものだと長年考えられてきたが、19世紀末にハインリヒ・シュリーマンの発掘によって古代の戦争の跡が残る遺跡が発掘され、イリオスではないかとも言われている。トロイア戦争は、紀元前13世紀ごろに実際に起きたものだという説や、周辺地域で繰り返し起こった小規模な侵略が題材となっているという説などがある。もちろん、トロイア戦争はそもそも存在しなかったという説も根強い。

 戦争のきっかけは、ギリシア神話の最高神ゼウスが、「地上の人間が増えすぎたので戦争を起こして少し減らそう」と考えたことだった。そこでゼウスの正妻の権力の女神ヘラ、戦と知恵の女神アテナ、美の女神アフロディーテの三者が、美を競って争うように仕向けた。三女神はイリオスの王子パリスに「誰が最も美しいか」の審判役を担わせる(パリスの審判)。ヘラは「世界を支配する力」を、アテナは「あらゆる戦いに勝利する力」を、アフロディーテは「最も美しい女」を、それぞれ与えると約束した。パリスが選んだのはアフロディーテだった。

 パリスはスパルタの国にイリオスからの友好使節の一員として訪れた。そこでギリシア一の美女と謳われたヘレンと出会い、ヘレンはアフロディーテの力によってパリスを愛するようになった。パリスとヘレンはイリオスに向かう。しかし、そのヘレンはスパルタ王メネラオスの妃であった。ヘレンはその美しさから求婚者が後を絶たなかったことから、メネラオスと結婚する際、「もしもこの結婚を脅かすものがいたら、すべての求婚者が一丸となってこの敵を排除する」という約定を結んでいた。さらに、イリオスに領土的な野心を抱くメネラオスの兄でミュケナイ王アガメムノンの思惑も加わり、ヘレンを奪還すべくギリシアの総力を挙げて千艘を超える軍船によるイリオスへの大遠征軍が結成された。これを、イリオスはパリスの兄で英雄ヘクトールを事実上の総大将に迎え撃つ。さらに、ギリシア神話の神々も、いずれかの陣営に与して、戦いは壮絶なものとなった。

 戦争は10年にもわたり続いた。ギリシア連合軍は幾度となく総攻撃をかけるもイリオスの城砦に阻まれ、たくさんの血が流れ、命を落とした。その中にはギリシア最大の英雄アキレウスの名も、イリオスの英雄ヘクトールの名も、戦争のきっかけを作ったパリスの名もあった。ギリシア一の知恵者であるイタケ王オデュッセウスの発案でたくさんの兵士が入ることができる巨大な木馬が建造された。ギリシアの軍勢がいなくなった海岸線に木馬が置き捨てられているのを見つけたイリオスの将兵は、これを神への供物だと考え、わざわざ自分たちの手で城壁を破壊してイリオスに運び込んだ。その夜、木馬から兵士たちがイリオスの城内に侵入し、撤退したように見せかけていたギリシア連合軍も総攻撃を開始。イリオスはわずか一夜にして陥落した。

 メネラオスは自分を裏切り戦争の原因となったヘレンを殺そうとするが、ヘレンが10年前と違わぬ美しさを保っていたことや、スパルタを去ったのはアフロディーテに惑わされてやったことだと命乞いしたことから殺すことができず、ともに国に帰ることにしたという。勝利したギリシア連合軍の将兵にも、イリオスに与した神々による報復にって悲惨な災厄が降りかかった。ギリシアの船団は帰国の最中、暴風雨に巻き込まれ生き残った英雄たちにも命を落としたものがいた。同じく暴風雨に巻き込まれたメネラオスはエジプトに漂着して帰国に八年の歳月がかかり、オデュッセウスも難破して祖国にたどり着くまで十年近く放浪生活を余儀なくされた。最高指揮官であったアガメムノンは国を開けている間に妃が愛人を作っており入浴中に謀殺された。



【ストーリー】

 物語の舞台となるのは今から3000年前のトロイ。当時ヘレスポントと呼ばれた海峡は、東方との唯一の交易路としてトロイに繁栄をもたらしていたが、そのためにギリシア諸国の侵略の脅威にもさらされていた。そのため、トロイは頑丈な城壁を築き敵の侵略に備えていた。トロイの王子パリスは和平交渉し交易を結ぼうとギリシアのスパルタに赴くことにした。しかし、パリスの姉のカッサンドラはこれに強く反対した。彼女は未来を見通すことができ、未来に起こるであろう不吉な影に気づいていたのだ。しかし、それは彼女が心を病んでいるからだと思われていた。カッサンドラの忠告を聞かず、スパルタへと船を出したパリスだったが、航海の途中で船は難破。浜辺にうちあげられたパリスを介抱したのがスパルタの王妃へレンだった。

 何もせずに立ち去るようにと忠告するヘレンだったが、パリスはスパルタ王メネラオスの元に向かう。メネラオスの元には、兄でミュケナイの王アガメムノンやイタケの王ユリシーズ、英雄アキレウスなどが顔をそろえていた。パリスは堂々と乗り込み、和平の話し合いに来たことを告げる。メネラオスは身分の証明をするあらゆるものを失ったというパリスを嘲り、スパルタの英雄アイアスと拳闘で勝負し勝ったなら、パリスと認めて和平に応じると言う。戦いはパリスの勝利に終わる。この時、メネラオスは気づいていた。その様子を見ていた自分の妻へレンのパリスを見つめる瞳に。それに嫉妬したメネラオスはパリスを監禁して拷問をかけようとするが、それを救ったのもヘレンだった。その結果、スパルタ兵に追われることになったパリスとヘレンはトロイへと逃れる。歓迎で迎えられた2人だったが、カッサンドラが問う。 「あなたの名前は何?」  そしてヘレンとパリスを追って、メネラオスを筆頭にミュケナイ王アガメムノンをはじめとしてギリシアの同盟者たちが繰り出してきた大船団がトロイに迫る。



【感想】

 このサイトでも紹介している2004年に制作されたブラッド・ピット主演の映画「トロイ」ではギリシア側から描いたトロイア戦争であったが、その約50年前に制作された映画「トロイのヘレン」ではトロイ側から描いたトロイア戦争が描かれている。どちらも神話としてのトロイア戦争ではなく、神々の意思を排除した人間同士の思惑入り混じる歴史スペクタクル映画となっている。神話としての性質を排除してしまったせいか、戦争の端緒となるパリスとヘレンのラブストーリーが身勝手に感じてしまう。普通に描くと、非があるのはパリスとヘレンである。いかに、ギリシアが最初からトロイを狙っていたという複線を入れようとも、公の人間として取ってはならない行動をとってギリシアに格好の口実を与えたことに違いは無い。メネラオスをいかに悪辣な人間として描こうと、ギリシアをいくら非道に描こうと、そこに何かの違和感が残るの当然に思う。ただ、「トロイのヘレン」でヘレンを演じたロッサナ・ポデスタは本当に美しかった。傾国の美女というのはああいうのを言うのだろう。



【こんな作品も・・・】



トロイア戦争

トロイ(2004年)

壮大なトロイア戦争を神話としてではなく架空の人間ドラマとして、古代ギリシャの英雄アキレスの視点で描いた歴史大作。


⇒ 世界の神話や伝承を扱った作品

▲ ページの上に戻る