ラスト・ディセント ナティ・パティ洞窟事故(2016年)





ラスト・ディセント ナティ・パティ洞窟事故(FOD)



DATE

THE LAST DESCENT/アメリカ

監督:アイザック・ハラシマ


<主なキャスト>

ジョン・ジョーンズ:チャドウィック・ホプソン
エミリー・ジョーンズ:アレクシス・ジョンソン
アーロン:ランドン・ヘネマン
スージー:ジリアン・ペトリー
ジョシュ・ジョーンズ:ジェイコブ・オマー
                   ……etc



目次


『ラスト・ディセント ナティ・パティ洞窟事故(2016年)』の作品解説

キーワード『ナッティ・パティ洞窟事故(2009年)』

『ラスト・ディセント ナティ・パティ洞窟事故(2016年)』のストーリー

『ラスト・ディセント ナティ・パティ洞窟事故(2016年)』の感想

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【作品解説】

 日本では劇場未公開。2009年、アメリカ合衆国ユタ州で発生した洞窟での事故をもとに、決死の救出劇を描いたサバイバルドラマ。逆さの状態で狭い洞窟内に取り残された若者の最後の姿を通じて描く宗教的な側面のある映画でもある。





【ナッティ・パティ洞窟事故(2009年)】

 ナッティ・パティ洞窟はアメリカ合衆国ユタ州のユタ湖の西に位置する洞窟。1960年に発見された。石灰岩が水の浸食を受けて作られた 石灰洞 (溶食洞窟)。地下深くから上昇する熱水が石灰岩の層を下から溶食したことで作られた深成洞窟で、隘路が三次元的に複雑に入り組んだ構造をしている。プロアマ問わず洞窟探検家を魅了してきたが、曲がりくねったり、這い進まなければならない狭隘な通路の中で閉じ込められた洞窟探検家やボーイスカウトの救助が幾度となく行われたことをきっかけに、2006年5月にゲートを設置してナッティ・パティ洞窟は一度閉鎖された。その後、管理体制を改めた後、2009年5月に一般への解放が再開された。

 2009年11月24日、当時26歳の医学生、ジョン・エドワード・ジョーンズは家族や友人ら11人で現地を訪れ、20時頃から洞窟の探検を始めた。全員が同じ場所にいたわけではなく、経験豊富だったジョンは、弟のジョシュら他の3人とともに「産道」と呼ばれていた狭隘な通路の探検に向かった。「産道」は這って進まなければいけない人一人がやっと通れる狭隘な通路だったが、奥に行けばやや広い空間があり、そこで折り返す予定だった。しかし、ジョンは間違えて地図にない別の隘路に入り込んだ。この隘路を「産道」だと信じたジョンは奥に進んでいき、下向きの裂け目を折り返し地点だと思い、逆さに潜り込んだ。しかし、そこで嵌り込み、身動きが取れなくなった。この裂け目は洞口から約120mの地点の25㎝×45㎝の小さなものだった。異変を察知したジョシュが助けに行き、足を絡めて引き上げようと試みるが失敗した。

 大規模な救助隊が編成され救助活動が開始されるも、通路のあまりの狭さとジョンの体勢が救助を困難なものにした。引き上げようにもすぐに足が天井に当たってしまい、引きずり出すのが困難だった。通信機器が入れられ、妻のエミリーがジョンを励まし続けた。救助隊員にとっても危険な作業の中、ロープと滑車によってジョンを引き上げる作戦が実行され、約24時間後に約60㎝引き上げることが出来た。しかし、滑車を設置していた岩盤が崩れ、ジョンは裂け目の中に再び落下してしまう。この時救助員も落下したカラビナで負傷した。その後もジョンの救出のために全力が尽くされた。足を切断しての救助なども検討されたがあまりに状況は過酷で困難すぎた。長時間にわたる無理な姿勢を続けたことによる体の負担の蓄積や呼吸困難などによりジョンは衰弱していった。事件発生から27時間後の25日23時56分、死亡が宣告された。救助隊は遺体回収を検討するも最終的に遺体の回収は危険すぎると判断し、遺体は洞窟内に残されることになった。ジョンの家族と地権者は、洞窟を墓標とすることで合意し、入り口をコンクリートで塞ぎジョンの祈念碑が嵌め込まれた。



【ストーリー】

 26歳の医学生、ジョン・ジョーンズは妻のエイミー、幼い娘のリジーとともに感謝祭のためにユタ州に帰省していた。幼少期からケイピング(洞窟探検)が趣味だったジョンは、弟のジョシュからナッティ・パティ洞窟の閉鎖が解けた事を知らされる。ジョンはエイミーの了解を得てジョシュとともにナッティ・パティ洞窟に探検に行くことに。夜の闇の中、真っ暗い洞窟の最深部に降りていくジョン。産道と呼ばれ難所として知られる通路の探検をするのが目的だった。しかし、入るべき穴を間違え地図にない通路に入っていくことに。方向転換しようとしたジョンは、下方向にできた裂け目に頭から突っ込んでしまい、すっぽりと嵌ってしまう。ジョンの異変を知ったジョシュが救出に来るが、どうしようもない。ジョシュはジョンを残して救助を呼びに行くことを躊躇いながらも、穴を出る。

 ジョンはしばらく意識を失っていた。夢の中でエミリーとリジーの姿を見る。その時、ジョンは自分を呼ぶ声で目を覚ます。救助隊が到着し、隊員のスージーがここまで降りて来たのだった。水を飲ませ、ジョンを励ますスージー。ジョンの足にロープを巻いて引き上げようとするが到底無理だった。一旦洞窟を出て状況報告をすると言うスージーに、ジョンは感謝の言葉を口にする。ジョンもスージーも、今が絶望的な状況であることは気付いていた。地上では大勢の救助隊員が結集していた。マスコミも、ヘリコプターを飛ばして救助の模様を中継している。医師は、逆さの状態が長く続くと意識の混濁が起き、血液中に毒素が溜まると言う。一刻の猶予もない。次に洞窟に入りジョンの所に向かうのはアーロンという隊員だった。彼は悲劇的な救助活動に関わり心に大きな傷を負っていた。アーロンはジョンを救出するまでは帰らない、と言い洞窟に潜っていく。

 ジョンの所に辿り着いたアーロンはジョンに声をかける。ジョンの状態は確実に悪化していた。アーロンはジョンを元気づけようと声をかけ続けるが、ジョンは時に意識を失い怖ろしい幻覚を見てはパニックを起こした。落ち着いたジョンは、エミリーとの馴れ初めをアーロンに語る。ジョンはエミリーとのデートのことを回想する。地上ではジョシュがエミリーを連れてきていた。救助隊のリーダーに頼み込み、エミリーは現場に留まることができた。救助隊は岸壁にドリルで穴を開けて滑車を入れてロープで引き上げる作戦を始めるが、岩盤に設置するにはドリルで穴を開けなければならず危険を伴う。アーロンは弱っていくジョンに声をかけ続け、水を飲ませる。ジョンはエミリーとの関係について話し続ける。地上から通信機が運び込まれ、エミリーもジョンを励ます。ジョンの精神も限界に近付く中、ようやく引き上げの準備が整った。



【感想】

 2009年に発生した悲劇的な事故をもとに描いた2016年の映画。日本版のDVDも発売されていないインディペンデント映画らしく、制作の経緯などは分からなかったが、たった7年しか経っていないのによく作れたな、とまず思ってしまう。この事故をきっかけに、ナッティ・パティ洞窟は封鎖されることになったが、事故前は年間5000人以上が訪れる人気スポットで、初心者にとっても潜りやすい洞窟だったこともあり、一部では封鎖に反対する声があったという。7年しか経っていないのだし、遺族や関わった人たちや地元の人たちも当時の空気や無念の思いを覚えていただろう。個人的には、悲劇を忘れさせないために、という大義の下に制作される映画による追体験は、結果的に悲劇をエンタメにし、遺族や関わった人たちの心情を傷つけてまでやらなければいけないのか、というふうにも考えてしまう。

 この映画は、事故に至る経緯や救出作業の経緯はほぼ公にされている通りだと思うし、関係する人物の名前などもそのまま使用しており、実際の報道映像を流用したと思しき映像が挿入され、ドキュメンタリーのような印象も受ける。少し間違えば身動きができなるなる暗闇の世界に足を踏み入れていく人間の気持ちは自分には理解できない。その中で取り残され、身動きできない状態で死を待つばかりなどという状況は考えたくもない。この映画でジョンを演じた方も、理解できない方の人だったのか、ジョンの切迫した精神状態や恐怖をあまり描けておらず、あまり修羅場のような救助の現場という感じはしなかった反面、救助側の無念さはひしひしと感じられた。



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