KING ARTHUR/アメリカ
監督:アントワーン・フークア
<主なキャスト>
アーサー:クライヴ・オーウェン
グウィネヴィア:キーラ・ナイトレイ
ランスロット:ヨアン・グリフィズ
セルディック:ステラン・スカルスガルド
マーリン:スティーヴン・ディレイン
トリスタン:マッツ・ミケルセン
ガウェイン:ジョエル・エドガートン
ガラハッド:ヒュー・ダンシー
ボース:レイ・ウィンストン
ダゴネット:レイ・スティーヴンソン
シンリック:ティル・シュヴァイガー
ゲルマヌス:イヴァノ・マレスコッティ
……etc
キーワード『グレートブリテン島からのローマ軍の撤退(409年)』
日本では2004年7月に劇場公開されたアメリカ映画。有名な中世騎士伝説「アーサー王と円卓の騎士たち」の物語をベースにした映画化だが、舞台は西ローマ帝国の力が衰えていた5世紀初頭のブリテン島。ローマ帝国の将軍がアーサー王のモデルであるという仮説を基に、ローマ帝国の軍人である主人公とその配下の傭兵たちが、ブリテン島の先住民族であるブリトン人やピクト人、ブリテン島への侵略を目論むサクソン人との確執や戦いを経てブリテン島の王となり、伝説として語られるに至る顛末が描かれている。
現在日本でイギリスと呼ばれている「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」を構成するグレートブリテンはイングランド、スコットランド、ウェールズからなる。ブリテン諸島で最も大きな島である。ブリテン諸島の語源は古代ケルト系の先住民であるブリテン人に由来し、古代ローマ人がラテン語でブリタニア(ブリテン人の土地)と呼んだことが語源だったとされる。
ガリア戦争の最中の紀元前55年、紀元前54年にユリウス・カエサルがグレートブリテン島に2度の遠征を行った。これがローマによる最初の軍事的な接触であったとされる。この時の遠征では、恒久的な拠点を築いてローマによる支配下に置くことはできなかった。ローマ帝国の時代となった紀元43年、第4代皇帝クラウディウス帝の遠征によってグレートブリテン島南部がローマ帝国の支配下に置かれ、属州ブリタンニアが成立した。強大な軍事力を背景に80年頃にはローマ帝国の属州時代最大の版図を獲得する。属州の拠点としてロンディニウム(現在のロンドン)などの都市が築かれ、ローマ時代の遺跡からは闘技場や公衆浴場などが見つかっており、グレートブリテン島のローマ化が進んだと考えられている。しかし、北部の部族の抵抗は激しく、ローマ帝国は北からの防衛のために122年から10年をかけてハドリアヌスの長城が築かれた。そのさらに北方に142年から144年にかけてアントニヌスの長城が建造されたが、建造後20年ほどで放棄され、ローマ帝国軍はハドリアヌスの長城の南に撤退した。
グレートブリテン島南部の肥沃な土地はローマ帝国の穀倉地帯として属州ブリタンニアは栄えた。支配された先住民族にはローマ式の行政単位が持ち込まれ課税が行われた。従順な民族にはそれまで持っていた諸権利が実質的に維持された。約350年に渡るローマ帝国の軍団による支配によって、属州ブリタンニアには一定の安定がもたらされた。属州ブリタンニア総督には皇帝の信頼が厚く、優秀で経験豊かな人材が任命されることが多かった。192年末のコンモドゥス帝暗殺によって生じた皇帝乱立とローマ内戦(~197年)を収めてセウェルス朝を立ち上げたルキウス・セプティミウス・セウェルス帝など、属州ブリタンニア総督を経験して皇帝になった者も多い。しかし、4世紀に入ると属州ブリタンニアは西のアイルランド人、東のザクソン人からの攻撃を受けるようになった。属州内でも反乱が相次ぎ、ローマ人の活動は低調になっていった。ローマ帝国本国も4世紀後半になるとゲルマン人の侵入とササン朝ペルシアの脅威によってたびたび属州の兵力を呼び寄せなければならくなった。属州ブリタンニアの有力者が皇帝を名乗って混乱するローマ帝国に兵を率いて赴いたこともあった。ローマ帝国は395年に東西に分裂した。407年に属州ブリタニアの駐留軍の司令官であったコンスタンティヌスがローマ帝国皇帝コンスタンティヌス3世を自称し、属州ブリタンニアの残存戦力を率いてグリートブリテン島を離れた。これ以降、ローマ帝国の正規軍がグリートブリテン島に来ることはなかった。
軍を失ったことで属州ブリタンニアの都市や住民――ローマの支配下にあったケルト系ブリテン人などは、ローマ帝国に敵対していた北方のピクト人、アイルランドのスコット人、海の向こうのから侵入してきたアングロ・サクソン人などによる略奪に苦しむことになった。410年に西ローマ帝国皇帝ホノリウスに救援を求めるが、西ローマ帝国に遠く離れた属州の救援にローマ軍を送るだけの戦力的・経済的余裕はなく、「自分たちのことは自らの力で防衛せよ」という内容の勅令(ホノリウスの勅令)を出し、属州ブリタンニアの防衛を放棄した。これによってローマ帝国による属州ブリタンニアの支配は、事実上の終わりとなった。ローマ帝国が撤退したグレートプリテン島南部のブリテン人では旧来の部族制度が復活し、ゲルマン人傭兵を雇って対抗するが、政治的統一が果たされないまま、アングロ・サクソン人の侵入を許し、ゲルマン人たちは土着化し、諸勢力が乱立する暗黒時代に突入していく。
イギリスがブリテンと呼ばれ、ローマ帝国の支配下にあった時代。物語の始まりの15年前。少年だったランスロットがローマ帝国の法に従い、兵役の任に就いた。ブリテン人の血を引くアーサーはローマ軍の指揮官としてランスロットなど戦士たちを率いていた。かつては15人いた仲間たちも、戦いの中で命を落とし今は半分に減っていた。しかし、アーサーとその仲間たちも、もうすぐ兵役の任を解かれようとしていた。ローマ帝国がブリテンから撤退するという噂も、彼らにとっては関係ないことだった。任務を終えた彼らは、思い思いの道を歩んでいくのだから。
ところが、ブリテンにやってきたローマからの使者ゲルマヌス司教は、アーサーたちに最後の任務を与える。ハドリアヌスの城壁の北で暮らしているローマ人貴族の一家を救出しろというのだ。そこは、ウォードという蜂起したブリトン人や残虐な侵略者・サクソン人に囲まれた危険な地であった。いくら歴戦の勇者であるアーサーと仲間たちであっても命がけという言葉も生ぬるい、全滅必至の任務になるのは歴然だった。アーサーは拒否を示すが、司教の「従わなければ兵役の任が解かれることはない」と恫喝も同然の命令に従うよりなかった。
途中、ウォードの襲撃を受けたアーサーたちは苦戦を強いられる。しかしウォードの首領マリーンはアーサーに利用価値があると考えたか、引き下がった。アーサーたちはローマ人貴族たちの所に辿り着くが、彼らの横柄な態度に辟易する。さらにキリスト教への改宗を拒むブリテン人たちへの仕打ちを目の当たりにし、嫌悪と怒りを覚える。その中で、監禁されていたグウィネビアという女性を救出する。サクソン人の脅威が迫っており、ローマ人貴族たちやともに暮らしていた者たち、グウィネビアを連れてハドリアヌスの長城に向かって逃走する。ブリテンの平和を願うグウィネビアは、ローマ帝国のために戦うアーサーを非難し、自分たちと共に、ブリテンの平和のために戦おうと迫る。サクソン人の軍団を凍り付いた湖の上で足止めし、氷を割ってその下に落とす作戦を立てたアーサー。作戦は成功するが、その戦いの中でまた仲間を失うことになる。
ローマ人の貴族たちをハドリアヌスの長城に送り届けたアーサーたちはようやく兵役の任が解かれ、自由の身となる。しかし、ようやく自由の身となったアーサーはサクソン人の脅威が迫るブリテンの状況を考え悩んでいた。アーサーが出した結論は、晴れて自由の身になった配下の戦士たちに別れを告げ、ブリテンの未来のために戦うことだった。サクソン人の軍団が迫る中、アーサーはグウィネビアとともに砦に残る。マーリンが率いるウォードもアーサーと合流し、共に戦うことになる。そして、一度はアーサーの下を去っていった仲間たちも、アーサーと共に戦うために再び結集する。
まずこの映画は「アーサー王と円卓の騎士たち」の映像化作品ではない。冒険ファンタジーだと思って観たら思っていたのと違う、と感じるだろう。アーサー、グウィネビア、ランスロット、マリーンなどおなじみの名前が並ぶが、アーサー王物語とは全く人格の違う登場人物たちであり、アーサー王物語をモチーフにはしているが、神話とは距離を置いた歴史スペクタクルとして描かれた映画である。序盤は、気分の良くないシーンも続き、いまいち盛り上がりに欠ける展開が続くが、侵略者であるサクソン人との戦いが本格的になってくるとがぜん盛り上がってくる。あまりなじみのない時代を舞台にしているし、とっつきにくく感じるかもしれない。実際、世間の評価はあまり芳しいものではなかったようだ。個人的にも、アーサーがブリテンのために立ち上がる意志を固める描写をしっかり描いてほしかったと思う。しかし複雑に絡み合う民族、宗教を大胆に脚色し、新解釈を加え、迫力あるアクションを織り交ぜた良作であったと思う。
中世騎士道物語の「アーサー王と円卓の騎士たち」をモチーフに、アーサー王の誕生からその死までを描く冒険ファンタジー。
中世騎士道物語の「トリスタン物語」のトリスタンとイゾルデの許されざる愛の物語を、ローマ帝国撤退直後の群雄割拠の暗黒時代のグレートブリテン島を舞台に描く歴史ファンタジー。