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ベオウルフ〜呪われし勇者〜(2007年)




DATE


Beowulf/アメリカ

監督 : ロバート・ゼメキス


<主なキャスト>


ベオウルフ : レイ・ウィンストン

フロースガール : アンソニー・ホプキンス

アンファース : ジョン・マルコヴィッチ

ウィールソー : ロビン・ライト・ペン

ウィグラーフ : ブレンダン・グリーソン

グレンデル : クリスピン・グローヴァー

ウルスラ : アリソン・ローマン

グレンデルの母 : アンジェリーナ・ジョリー

                   ……etc


目次
『ベオウルフ〜呪われし勇者〜(2007年)』の作品解説
キーワード『叙事詩「ベーオウルフ」』
『ベオウルフ〜呪われし勇者〜(2007年)』のストーリー
『ベオウルフ〜呪われし勇者〜(2007年)』の感想


【作品解説】

 日本では2007年12月に劇場公開されたイギリス、アメリカの合作映画。日本でも2D、3Dの両方が公開され、ドルピー3Dが初めて採用された映画となった。トルーキンの『指輪物語』にも大きな影響を与えたと言われる最古の英文学の一つである英雄ベーオウルフの冒険物語をモチーフに、現代風の解釈を盛り込みながら壮大なストーリーでつづった大作映画。古き時代の英雄叙事詩を、当時最新のパフォーマンス・キャプチャー技術を駆使して、実写とCGを融合させた革新的な映像で鮮やかに描かれている。


【叙事詩「ベーオウルフ」】

 古英語で書かれた英雄叙事詩。デネ(デンマーク)を舞台とした、英雄ベーオウルフの冒険を描いている。最古の英文学の一つとされ8世紀に成立したとするのが通説となっている。作者は不詳ながらこの時期のゲルマン世界を代表する文学である。古英語文献の中で最も長大な部類に属することから言語学上でも重要な史料であるともされる。ベーオウルフの物語は10世紀ごろに筆写された写本によって今日まで伝えられている。この写本は大英図書館に所蔵されている。

 物語は大きく二つに分けられる。第一部は夜な夜なデンマークの王宮を荒らす妖怪グレンデルを王の甥である勇士ベオウルフが退治する。その復讐にきたグレンデルの母親もまた、ベオウルフによって湖底のすみかで退治される。50年が経ち、ベオウルフは王となり、平穏な日々を送っていたが、財宝を荒らされたことに怒ったドラゴンが王国を荒らした。老いたベオウルフはドラゴンに立ち向かいこれを撃ち滅ぼすが、自身も致命傷を負う。ベオウルフは哀惜とともに荼毘に付され、丁重に葬られ物語は終わる。

 現代のファンタジーの源流とも言える作品であり、研究者の中には『指輪物語』や『ホビットの冒険』などで知られるジョン・ロナルド・ルーエル・トールキン(1892年〜1973年)も大きな影響を受けたと言われる。後世のベーオウルフの研究に大きな影響を与えたとされるトールキンは1920年代にベーオウルフの現代語訳を書いたが、出版は2014年を待たなければならなかった。


【ストーリー】

 舞台は古代デンマーク。フロースガール王たちは、繁栄を祝って酒宴を開いていた。しかし、宴も最高潮に達した頃、突然彼らの前に醜悪で凶暴な魔物グレンデルが姿を現す。グレンデルは、多くの戦士たちをなぎ倒し消えていった。王はグレンデルを倒したものに莫大な黄金を約束する。それに応じてやってきたのが屈強な戦士ベオウルフだった。ベオウルフはグレンデルが素手なら自らも素手で戦おうという豪胆な男だった。グレンデルをおびき寄せるため、かつてグレンデルによって破壊された館で仲間たちと酒宴を始めた。そして、姿を現す醜い怪物。死闘の末にベオウルフはグレンデルを滅ぼすのに成功する。

 これで王国に平穏がもたらされたと喜んだのも束の間、さらに危険なグレンデルの母親の存在が明らかになる。グレンデルの母親は、ベオウルフの仲間たちを皆殺しにして去っていく。グレンデルの母親が住むという洞窟に向かうベオウルフだったが、彼の前に姿を現した魅惑的な魔女は一つの取引を持ちかける。それは、莫大な富と、権力と、永遠の力を与えるというものだった。ベオウルフはその誘惑に負けてしまう。そのことを隠してグレンデルの母親を倒したと伝えた彼は王になる。その代償をいずれ支払う日が来ることをそのとき彼は知らなかった。


【感想】

 とにかく素晴らしい映像技術。フルCGのキャラクターが、生き生きと画面全体を駆け回る。クライマックスのドラゴンとの対決場面はまさに一番の見せ場。とにかく疲れるほどのアクションだった。グレンデルとの対決場面で全裸になったり、前半と後半でいきなり50年もたってしまっているのを、違和感なく処理しているのは凄いの一言。決してただのフルCGのアニメにはしないんだという決意を感じられると同時に、素晴らしい俳優陣の演技をしっかり活かせていると思う。

 とはいえ、まだ、顔の造形や世界に作り物っぽさが感じられ、動きにぎこちなさや不自然を感じる場面もあり、どこか気持ちの悪さを感じた。今にして思うと、あれが不気味の谷というものだったのだろうか。当時としては最高水準のCGに目が行きがちかもしれないが、グレンデルやその母親と戦う物語と、その50年後に唐突にドラゴンが出現する物語とを一つにつなげ、そうすることで豪胆な勇者像とは全く違ったべオウルフ像を描いている。