清須会議(2013年)

DATE
日本
監督・脚本 : 三谷幸喜
原作 : 三谷幸喜 『清須会議』
<主なキャスト>
柴田勝家 : 役所広司
羽柴秀吉 : 大泉洋
丹羽長秀 : 小日向文世
池田恒興 : 佐藤浩市
黒田官兵衛 : 寺島進
織田三十郎信包 : 伊勢谷友介
お市 : 鈴木京香
織田信孝 : 坂東巳之助
織田信雄 : 妻夫木聡
松姫 : 剛力彩芽
……etc
【作品解説】
三谷幸喜氏が自身が書き下ろした同名小説を自ら脚色し、監督・脚本による痛快歴史エンターテイメント。天正10年(1582年)の清洲会議(清須会議)を舞台に、羽柴秀吉と柴田勝家の水面下での激しい駆け引きや、その裏で繰り広げられる悲喜こもごもの人間模様や思惑が交錯する。
【清洲会議(天正10年(1582年))】
天正10年6月2日(1582年6月21日)早朝、本能寺の変が起こり、天下統一を目前にした織田信長が、織田家重臣の明智光秀の謀反によって自害して果て、嫡男の信忠も二条城で命を落とした。明智光秀は山崎の戦いで敗れ敗走中に命を落とした。6月27日に尾張国清洲城に柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興の4人の織田家家臣が集まり、織田家の後継者と遺領の再配分を話し合った。織田家の重臣であり関東を任されていた滝川一益は北条氏との戦での敗走の最中での出来事とあって不参加となった。
織田家の後継者には次男の信雄と、三男の信孝が争った。筆頭家老であった柴田勝家は英明で知られていた信孝を推したが、羽柴秀吉は信忠の遺児であるまだ三歳の三法師を継嗣として推した。明智光秀を討った秀吉の発言力は大きく、継嗣に関して秀吉の意見が通り、家督は三法師が継ぎ、織田信孝が後見人となった。ただ、織田信長が死んだとき既に織田家の家督は信忠が継いでおり、家督を三法師が継ぐのは既定路線であり、柴田勝家が信孝を推したというのはフィクションであるとも言われている。
領土の再配分に関しては、秀吉は自身が持っていた近江長浜の所領を柴田勝家の甥に譲ったものの、山城、河内、丹波を領土とし28万石の加増となった。石高もさることながら、京都を押さえられたのは大きかった。秀吉は織田家家臣の中での影響力を大きく増すことになり、織田家家臣団の力関係は逆転した。弔い合戦に勝利し影響力を増した“勝ち組”の秀吉と、遠い地で戦っていたために合戦に参加すらできなかった“負け組”の柴田勝家、弔い合戦にも清洲会議にも参加できず関東を失い立場をなくした“負け組”の滝川一益、ある意味一番の“負け組”となった織田家の運命に翻弄された織田信孝……。勝ち組と負け組の対立は翌年の賤ヶ岳の戦いへと繋がっていく。
【ストーリー】
天正10年6月。本能寺の変によって天下を掴もうとしていた織田信長がこの世を去る。謀反人の明智光秀は討たれ、織田家の後継者を誰にするかの評定が尾張の清洲城でもたれることになり、家臣たちが続々と清洲城に終結してきた。候補となるのは次男の信雄と三男の信孝。信孝は才ある武将だが母親の身分が低く、信雄は大うつけ者と呼ばれていた。筆頭家老の柴田勝家は織田家家臣のナンバー2である丹羽長秀と組んで信孝を後継者としようとしていた。明智光秀を討って発言力を増していた羽柴秀吉は、信頼する黒田官兵衛を味方に清州に乗り込み、勝家に対抗して信雄を推すことに決める。感情的で剛直な勝家と、飄々としていながら腹の内を見せない秀吉。正反対の二人だが、織田家の後継者争いのためにすることは賛同者を増やすこと、という点では一致していた。
信長の妹であるお市のことを、勝家も秀吉も心を寄せていた。お市は、浅井長政という武将に嫁いでいたが、長政が信長と対立して敗れて命を落としたことで織田家に戻っていた。お市は勝家のことは田舎者と馬鹿にしていたが、それ以上に、信長と長政との戦に参戦し、夫と息子を死なせた秀吉のことは憎んでいた。お市を味方にできなかった秀吉は信長の弟・三十郎信包に近づき味方にする。さらに評定は数人の宿老で行うことに決められた。評議に参加することになった信長の乳兄弟の池田恒興は、立場的には相応しくとも損得で転ぶ男である。秀吉は領地を餌に自分の味方に付くように求める。浜では信雄側と信孝側に分かれた旗とり戦が行われることになった。次期当主に相応しいのが誰かを織田家の家中に見せるのが目的だったが、そこで信雄は噂に違わぬ馬鹿っぷりを見せつけ、秀吉も嫌気がさす。その帰りの川辺で今は亡き信長の嫡男・信忠の妻・松姫と息子の三法師に会う。その時、秀吉と官兵衛の脳裏に一発逆転の秘策が思い浮かんだ。
【感想】
戦国時代が織田の時代から羽柴(豊臣)の時代へ移る第一歩目となった出来事を、コメディタッチに描いた痛快時代劇。状況はこれからの日本の在り方を話し合うわけだからそれぞれの思惑入り混じる非常にシリアスな出来事なのだが、柴田勝家を演じる役所広司さんと羽柴秀吉を演じる大泉洋さんをはじめ、軽妙なキャラクター創造が絶妙で、不思議と笑える面白い映画だった。しかし、清洲会議は天下の趨勢が織田から羽柴へと移り変わる端緒となった出来事でもあり、歴史劇にもよく登場する有名すぎる出来事でもあるため、どんな演出をしてみたところで、この後どうなるのだろうというワクワクした感じも、意外な感じも受けなかった。かといって、三谷作品が見たくて歴史は興味もないという人にとっては、時代背景などが分かりにくく少々不親切な作品ではなかったかと思う。