あなたは 人目の訪問者です。


アメリア〜永遠の翼〜(2009年)





DATE

AMELIA/アメリカ・カナダ
監督 : ミーラー・ナーイル

<主なキャスト>

アメリア・イヤハート : ヒラリー・スワンク
ジョージ・パットナム : リチャード・ギア
ジーン・ヴィダル : ユアン・マクレガー
フレッド : クリストファー・エクルストン
ビル : ジョー・アンダーソン
エリノア・スミス : ミア・ワシコウスカ
                  ……etc

目次
『アメリア〜永遠の翼〜(2009年)』の作品解説
キーワード『アメリア・イアハート(1897年〜1937年)』
『アメリア〜永遠の翼〜(2009年)』のストーリー
『アメリア〜永遠の翼〜(2009年)』の感想


【作品解説】

 日本では2010年11月に公開された伝記映画。1932年に女性として初めて大西洋単独横断飛行に成功したアメリア・イアハートの、冒険への飽くなき情熱と挑戦。そんな彼女を献身的に支えた夫との愛。そして最後のフライトと決めた1937年の赤道上世界一周飛行への挑戦の最中、太平洋上で消息を絶つまでを描いている。




【アメリア・イアハート(1897年〜1937年)】

 アメリア・イアハートは1897年7月アメリカのカンザス州アッチソンでドイツ系の裕福な家庭に生まれた。第一次世界大戦中はカナダのアメリカ陸軍病院で看護助手として働いていたという。1921年に飛行訓練を受け、初めて飛行機を購入したが、身内の事情で手放さなければならなかったという。1928年4月に彼女を空へと招くことになる政治評論家で出版者のジョージ・パットナムと出会う。彼とは、大西洋単独横断飛行への準備の中で愛情を深め、1931年2月に結婚している。飛行士としてのキャリアを順調に積み、1931年にはオートジャイロでの最高到達高度記録を樹立するなど実績を重ねた後、32年5月、チャールズ・リンドバーグに続く、大西洋単独横断飛行に挑戦。これまでにも女性の挑戦者はいたものの、いずれも途中で墜落して命を落としていた。当初予定はリンドバーグと同じニューヨークからパリへのルートだったが、気象の問題や機械的なトラブルに見舞われ、アイルランドのロンドンデリー近くの牧場に着陸した。この成功によって議会からの空軍殊勲十字章などを授かった。

 その後も、アメリカ大陸単独横断飛行などを達成し、冒険家としての実績を重ねるとともに、女性の地位向上のための社会活動にも熱心に取り組んでいたという。ミス・リンディとも称され、知的かつチャーミングな女性であったため、国民的なヒロインとなったが、1937年7月、赤道上世界一周飛行の途中で、南太平洋で行方不明になった。アメリカ海軍や沿岸警備隊、隣接地域を委任統治していただ日本帝国海軍も参加して大規模な捜索が行われたが、発見には至らなかった。

 当時は日本との関係が悪化していた時期だったため、現在でも日本軍により撃墜されたとか、捕虜とされ終戦後に帰国して別人としてひっそり生きたとか、東京ローズの正体がアメリアであるという説を唱える者までいるらしい。映画が完成後の2010年12月に太平洋の無人島ニクマロロ島で、小さな骨や1930年代の女性のメイク用コンパクトや割れた鏡、米国製のボトルなどが発見されたと伝えられ、これがアメリアのものではないかと話題になった。事実であれば、彼女は無人島でしばらく生き延びていた可能性があるという。冒険家がその先で命を落とすことは珍しくなく、彼女も覚悟はしていただろうと思うが、栄光とも賞賛ともかけ離れた場所で、どのような思いで最期の時を迎えたのだろう。


【ストーリー】

 物語は、1928年に夫となるジョージ・パットナムと出会うところから始まる。女性初の大西洋横断に成功し、全米中を熱狂させたアメリアは、一躍時の人となった。広報を担当した出版人のジョージと次第に惹かれ合い、結婚に至った彼女だったが、空への情熱はいささかも衰えることなく、大西洋単独横断や大陸横断、太平洋横断など華々しく活躍する一方、女性飛行士の地位向上のために活動する。

 しかし、飛行士としての活動を続けるには多額の資金がいる。ジョージに言われて意に沿わない仕事をせざるをえないこともたびたびだった。私生活でもあくまでも奔放に振る舞うアメリアとジョージの間には亀裂が入り始め、アメリアは別の男性のもとへ走ってしまう。しかし、どんな時でも自分を支えてくれたのは誰であったのかに気付いたアメリアは、ジョージにこれが最後のフライトと誓い、彼女の最大の夢にして最も危険な冒険となる世界一周飛行への挑戦を決意した。


【感想】

 この映画の中では、英雄としてのアメリア・イアハートではなく、あくまで女性としてのアメリア・イアハートに主眼を置かれているように思う。単に、華々しい彼女の業績を書き連ねるのではなく、当時の……現在でもそうだと思うけれど、夢を追うには金がいるという厳然とした現実があり、その現実の部分の方が強調されているように思う。そのためか、全体的に淡々とした印象を受けた。無理やり感動させてやろうというエピソードでも入っていればまた違ったかもしれないが、人によってはつまらない映画と感じるかもしれない。

 この映画の一番の残念な部分は、アメリア・イアハートの幼年時代を含めた過去の部分をほとんど描かなかったことだろうと思う。そのため、彼女の空にかける情熱がどこからきているのか、最後のフライトでの彼女の無謀とも思えるフライトへの執着はどこから来るのか、よくわからなかった。肝心の飛行の場面にあまり魅力を感じなかったのも、淡々と描いてしまった以上に、アメリアの情熱の背景が分からなかったせいだと思う。20世紀初めを舞台にした冒険飛行ものとしては、少々物足りなく感じるものの、アメリア・イアハートの伝記ものとして良作だと思う。