ジキル&ハイド(1996年)
DATE
Mary Reilly/アメリカ
監督 : スティーヴン・フリアーズ
原作 : ヴァレリー・マーティン『
メアリー・ライリー/ジーキル&ハイドの恋』
<主なキャスト>
メアリー・ライリー : ジュリア・ロバーツ
ヘンリー・ジキル博士/エドワード・ハイド氏 : ジョン・マルコヴィッチ
執事プール : ジョージ・コール
メアリーの父 : マイケル・ガンボン
ケント夫人 : キャシー・スタッフ
……etc
【作品解説】
日本では1996年8月に公開されたアメリカ映画。ロバート・ルイス・スティーブンソン原作の名作『ジキル博士とハイド氏』を、奉公人の視点で描いたヴァレリー・マーティン原作の『メアリー・ライリー/ジーキル&ハイドの恋』の映画化。
19世紀に書かれた二重人格物の代名詞とも言える名作を新たな視点で描こうとした意欲作だったが、公開前からトラブルや制作の遅延があり期待度が低くなっており、公開後もその評価を覆すことはできなかった。興行的に失敗したうえ、メアリー役のジュリア・ロバーツはゴールデンラズベリー賞最低主演女優賞にノミネート、フリアーズ監督も最低監督賞にノミネートされるほど酷評された。
【ジキル博士とハイド氏(Strange Case ofDr Jekyll and Mr Hyde】
「ジキル博士とハイド氏』はスコットランド出身の小説家、ロバート・ルイス・スティーブンソン(1850年〜1894年)の代表作の一つ。1885年に執筆され、1886年に刊行された。原題は『The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde』。高名なジキル博士と、醜悪で凶悪なハイド氏。弁護士アターソンの回想と、ジキル博士の告白を通じ、恐ろしい真実が明かされる。ジキル博士は自らの二重性に気付き、善なるジキル博士と悪なるハイド氏に分離する薬を作り出すが、そのことが取り返しのつかない事態を招くことになる。
二重人格ものの代名詞であり、二面性の強い人のたとえとして使われることも多いが、薬を飲むことで人格が変わり、容貌も醜悪なものに変わるという、解離性同一性障害とは異なった描写となっている。人の持つ二重性にスポットライトをあてた作品だったが、作品自体はホラー味の強い作品であり、グロテスクな描写や最後に悪が勝利するというストーリーからか、刊行当時から批判的な論調で語られることも多かったという。ロバート・ルイス・スティーブンソンは最初に書いた原稿を妻に酷評され、新たに白紙の状態から三日で書き上げたと伝えられている。
【ストーリー】
時代は19世紀後半。イギリスのある町のヘンリー・ジキル博士の邸宅で奉公人として働くメアリー。貧しい生まれで、不幸な生い立ちの彼女だったが、今は優しい主人の下での仕事に満足していた。あるとき、失敗をジキル博士に庇ってもらったことをきっかけに、個人的な話や互いの内面に関わる話をするようになる。
それと同じ頃、ハイドという助手がジキル博士の所に出入りするようになる。幼い頃、父の虐待を受けて育ったメアリーは、その父に似た粗暴で酷薄なハイドになぜか惹かれていることに気づくのだった。ハイドに関する所用をジキル博士から依頼されたり、ハイドの狂気を目の当たりにすることになったメアリーは、ハイドの正体に薄々気付き始める。
【感想】
残念ながらホラーとしてもサスペンスとしてもいまいち弱い凡作。主役のメラリーのキャラクターが弱いせいで、ただジキル博士とハイド氏の物語を横から眺めているだけの存在になってしまっているように思う。それに何より、ジキル博士=ハイドという構図は見ている人がみんな知っていることだから、恐怖の対象にはなりえない。今、ジキル博士とハイド氏の物語を映像にしても、傑作にはなりえないんだろうな、なんて思ってしまった。