マリア(2006年)
DATE
THE NATIVITY STORY/アメリカ
監督 : キャサリン・ハードウィック
<主なキャスト>
マリア : ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
ヨセフ : オスカー・アイザック
アンナ(マリアの母) : ヒアム・アッバス
ヨアキム(マリアの父) : ショーン・トーブ
ヘロデ王 : キアラン・ハインズ
エリサベト : ショーレ・アグダシュルー
ザカリヤ : スタンリー・タウンゼント
天使ガブリエル : アレクサンダー・シディグ
メルキオール : ナディム・サワラ
バルタザール : エリック・エブアニー
ガスパール : ステファン・カリファ
……etc
【作品解説】
日本では2007年12月に劇場公開されたアメリカ映画。新約聖書の受胎告知からキリスト降誕までの物語をモチーフにしている。過酷な運命を背負ってしまった少女と、それを必死で支えようとする夫を描いた心温まる作品。
【キリスト降誕(紀元前4年?)】
キリスト教において救い主とされるイエス(紀元前4年?〜30年?)の生誕についてはマタイ福音書とルカ福音書に記されている。どちらも、書き方は違うものの、マリアが通常の男性との行為ではなく、精霊によって身ごもったと記されている。現在のイスラエルの北部に位置するナザレに、マリアという若い女性が住んでいた。マリアには大工をしているヨセフという婚約者がいた。
ある時、マリアのもとに天使ガブリエルが現れ、祝福の言葉とともに「あなたは子を授かり、男の子が生まれる。その名をイエスと付けよ」と告げた。まだ男を知らなかったマリアは戸惑うが、ガブリエルは神にできないことは何一つないと言い、「あなたが生む子は聖なるもので、神の子と呼ばれる」と語った。マリアはその言葉を受け入れた。マリアの懐妊を知ったヨセフは、このことを表沙汰にせずに婚約を解消しようとした。そのヨセフの夢の中にも天使ガブリエルが現れ、マリアの体に宿ったのは精霊の子であり、恐れずにマリアを迎えるように、と告げた。その言葉を受け入れたヨセフは、ガブリエルの言葉に従いマリアを家に迎えた。
同じ頃、ローマ帝国皇帝は、全領土の住民に人口調査を命じた。自分の祖先の地で住民登録を行う必要があったので、人々は自分の故郷へと向かった。ヨセフは古代のイスラエル王ダビデの系統に属するユダ族の生まれであったため、ローマ帝国支配下のユダヤ人国家・ユダ王国に向けて、身重のマリアとともに旅立つことになった。マリアとヨセフが向かうベツレヘムはダビデの生誕の地であり、予言者たちは「メシア」(救世主の意味。キリストはメシアのギリシア語表記)はダビデの子孫の中から誕生し、ベツレヘムからユダヤの王となる者が生まれるだろうと告げていた。ベツレヘムに滞在中にマリアは男の子――イエスを出産した。ルカ福音書ではマリアとヨセフは、生まれたばかりのイエスを布でくるみ、馬小屋の飼い葉桶に寝かせたという。
マタイ福音書では、イエスの誕生を知った東方の占星術の博士たちがユダ王国のヘロデ王の宮殿を訪れ「ユダヤ人の王はどこにおられるか」と問うた、という。ヘロデ王は自分の地位が危ういものとなると思い不安に駆られ、その子を探して見つけ次第報告するように博士たちに頼んだ。博士たちは、東方で見たユダヤ人の王の星に導かれて、イエスのいる場所に辿り着いた。博士たちはイエスをひれ伏して拝み、乳香、没薬、黄金を贈り物としてささげた。夢のお告げでヘロデ王の所に帰るのが危険だと知っていた博士たちは、来た道を避けて自分の国に戻ったという。博士たちに騙されたことを知ったヘロデ王は怒り、ベルサレム周辺の2歳以下の男の子を一人残らず殺害させた。しかし、ヨセフは夢の中で天使に警告されたため、マリアと生まれたばかりのイエスを連れてエジプトへと逃れた。
【ストーリー】
紀元前。ヘロデ王が統治する王国の小さな村に暮らす少女・マリアは、両親からヨセフという男との婚約が決まったことを告げられる。見ず知らずの相手との結婚に取り乱したマリアの前に、天使ガブリエルが現れマリアが「救い主」を産むことを告げられる。婚約中は性交渉を持ってはならない取り決めになっており、それを厳粛に守っていたマリアだったが、妊娠していることに気付き混乱する。同時に天使の言葉が真実であったと確信する。マリアは掟破りを犯したと村人から蔑みの目で見られ、両親にもヨセフにも信じてもらえない。しかし、ヨセフの夢の中にも天使が現れ、マリアの言葉は真実だと語る。ヨセフはマリアを信じ守ることを誓う。
そのころ、ペルシアでは東方の三博士が星の動きにより救い主が誕生しようとしていることに気づき王国へと旅立つ。同じ頃、救い主が生まれるという預言を恐れるヘロデ王は、自分の立場が危うくなることを怖れ、救い主を早く見つけて殺害するため、すべての民衆の住民調査を行うことを決めた。ヨセフはマリアを連れて故郷ベツレヘムへと向かうのだが、その旅は長く過酷なものだった。その困難な旅路の中で、マリアはヨセフへの信頼と愛情を深めていき、お腹の中の子を慈しみながら母になっていく。
【感想】
宗教的な側面を持った作品でありながら崇高な愛の物語に仕上がっている。主演のケイシャ・キャッスル=ヒューズが演じるマリアが少女から母へと成長していく演技は素晴らしく感じた。異国情緒あふれる三賢者の姿もなかなか面白い。マリアとヨセフが濁流やヘロデ王の兵士たちから逃れているあいだ、なんだか間延びした彼らの姿が滑稽でもある。でも個人的に助演賞をあげたいのはマリアが乗っていたロバ君かな〜と思う。描かれている時代や宗教的な背景に対して、作品そのものは衝撃も、話題性も少ないものの、ほんわかと感動させてもらえる作品になっている。