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コロンブス(1992年)



コロンブス[VHS]

DATE

Christopher Columbus the Discoverry/アメリカ
監督 : ジョン・グレン

<主なキャスト>

クリストファー・コロンブス : ジョージ・コラフェイス
トマス・デ・トルケマダ : マーロン・ブランド阪脩
フェルナンド2世 : トム・セレック
イサベル女王 : レイチェル・ウォード
マルティン・アロンソ・ピンソン : ロバート・デヴィ
ベアトリス : キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
アルバロ・アラナ : ベニチオ・デル・トロ
                   ……etc

目次
『コロンブス(1992年)』の作品解説
キーワード『コロンブスのアメリカ大陸到達(1492年)』
『コロンブス(1992年)』のストーリー
『コロンブス(1992年)』の感想


【作品解説】

 日本では1992年8月に劇場公開された。クリストファー・コロンブス(1451年?〜1506年)のアメリカ到達500周年を記念して制作されたアメリカ、イギリス、スペインの合作映画。同じ年にはコロンブスの生涯を描いた「1492コロンブス」が制作されている。


【コロンブスのアメリカ大陸到達(1492年)】

 マルコ・ポーロの東方見聞録に魅せられ、西回り航路でアジアのインドを目指し、アメリカ大陸に到達したクリストファ・コロンブス。コロンブスは1541年ごろにジェノヴァで生まれたといわれる。地中海の交易の拠点だったこの地で早くから商売の世界に身をおき、1475年〜1476年にジェノヴァの有力商人に雇用されてエーゲ海のキオス島に航海した。その後リスボンに居を構えたコロンブスはディ・ネグロ家に雇われさまざまな地へ向かいスペイン語を習得し、海図製作や航海技術も身につけた。地球が球体であると確信し、西回りでのアジア到達航路の着想を得たのもこの時期だったとされる。

 計画をポルトガル王家に持ち込むが一蹴されてしまい、コロンブスはスペインへの移住を決意した。そして、イザベル1世の聴罪司祭を務めた人物などの知己を得ることができ、イザベル1世への航海計画を具申する機会を与えられた。イザベル1世は、この具申を諮問委員会に検討させたが、この計画は却下される。ところがイザベル1世は1492年に計画を実行に移すように命じた。1492年8月3日に3隻の帆船に90人の乗組員を乗せた一行は、72日間をかけて西インド諸島のサン・サルバドル島へ到達した。この航海のさなか、コロンブスが2種類の航海日誌を用意していたと伝えられている。海の果てと、そこに住むという架空の怪物を船員たちは恐れていた為である。そのため、船員たちに見せる海図にはわざと少なめの航海情報を書き込んでいた。

 原住民を始め、数々の戦利品を持ち帰り、喝采を浴びたコロンブスの一行だったが、この時が彼の絶頂だった。その後、3度の遠征がされ、大陸本土にも達したが充分な成果を挙げることはできなかった。さらに、コロンブスの統治能力の欠如が明らかになるにつれ、当初約束されたさまざまな諸権利は次々と反故にされた。先住民を奴隷にして売ろうという考えも国王の不興を買った。人道的な視点からではなく奴隷にして売れば、その利益は奴隷商人のものになり、国王には一切の富が入ってこないからである。コロンブスには政治が見えていなかった。最後には「提督」の称号のみを残して一切の権利を剥奪されて不遇のうちにこの世を去った。コロンブスは死ぬまで、たどり着いた地がインドであると信じていたと言われるが……実際にはどうだったのだろう。コロンブスは西回り航路の距離を、2400海里(1海里が1852m)と想定していた。地球の大きさを過小評価していたわけで実際には16000海里もあった。果たしてこの事実を知っていたら、西回りでの航海を考えただろうか。


【ストーリー】

 ジェノバ人の若い船乗りのコロンブスがエーゲ海のキロス島で一枚の地図を買い求めることから物語は始まる。ルネサンスを経て、造船、航海の技術は格段に進歩したものの、大切な香辛料を海上を使って運搬するための航路は確立されてないなかった。アフリカの南東を回りインドへの航路を模索していたのはポルトガルで、スペインは国内のイスラム教徒対策に手一杯だった。西回りでインドを目指せばわずか3000マイル(1マイルは約1.609km)と考えたコロンブスはその計画をまずポルトガルに持ち込むが、見返りとして要求したものが大きすぎたこともあり断られる。

 その次に向かったスペインでも一度は断られてしまう。キリスト教にとって大洋を超えるというのは夢物語でもあり神への冒涜でもあった。しかし、イザベル女王の力添えもあって、3隻の船と乗組員を確保する事ができた。いよいよ出航したコロンブスたちだったが、一向に陸地が見えてこず、終わりの見ない航海に船乗りたちの不安はつのっていく。そして、出航して30日余が過ぎ、船乗りたちの精神的不安はピークに達する。反乱が起こったのだ。コロンブスは、後3日だけ前進し、4日目の朝が来ても何も見つからなかった場合、引き返すことに同意せざるを得なくなる。


【感想】

 この作品が製作された1992年はスペインの年だった。バルセロナオリンピックが開催され、コロンブスの新大陸到達500周年が盛大に記念された。日本でも一時的なスペインブームが起き、様々なスペイン本が刊行された。もとは、新大陸”発見”500周年とされていたが、南米諸国からの抗議があり、”到達”に改められた経緯がある。コロンブスのアメリカ大陸到達は、原住民の人権はおろか、人格を無視した侵略、略奪、植民地化の端緒である。歴史上の評価はとにかく、ヨーロッパが世界史の主役となる出来事だった。コロンブスの功績は別として、そう遠くないときに、誰かが成したことだろう。しかし、その後の歴史を見たときに、アメリカ大陸で起きた悲劇を考えると、せめて大陸にコロンブスの名が付かなかったのは彼にとって幸運だったとも思える。

 この映画では、コロンブスが大西洋を西に向けて船を出しインドを目指すという夢を、妨害や苦難に直面しながらスペイン女王の協力を取り付け、西洋人が足を踏み入れたことのない大陸へと至る物語となっていて、あまり大陸での話は出てこない。しかし、コロンブスがスペインへ帰国して一躍英雄となっている裏で、これからの悲劇の幕開けを暗示するような終わりとなっている。大航海時代を舞台にしているという以外は凡庸な作品であったが、歴史を変えた悲劇も一人の若者の夢が始まりなのだと感じさせられる。