ニュー・ワールド(2006年)
DATE
The New World/アメリカ
監督 : テレシス・マリック
<主なキャスト>
ジョン・スミス : コリン・ファレル
ポカホンタス : クオリアンカ・キルヒャー
ニュー・ポート船長 : クリストファー・ブラマー
ジョン・ロルフ : クリスチャン・ベイル
……etc
【作品解説】
日本では2006年4月に劇場公開されたイギリス・アメリカ映画。ディズニー・アニメ『ポカホンタス』の題材になったことでも知られる、アメリカ大陸への入植時代の実話をベースに、入植にきた白人男性と先住民族の少女との恋の物語。ヒロインのポカホンタスに抜擢された新人のクオリアンカ・キルヒャーは、まだ14歳だったため、ラブシーンのいくつかは削除されることになったという。
【ポカホンタス(1595年頃〜1617年)】
17世紀初め。未開の地であった北アメリカ大陸西海岸のバージニアに、イギリス人たちが入植し、ジェイムス・タウンが築かれた。その時、ジェイムス・タウンに入植したイギリス人たちが出会った先住民がポウハタン族だった。ポカホンタスはポウハタン酋長ワフンスナコクの末娘であり、本名はマトアカとかマトワであったという。ポカホンタスは「お転婆」「甘えん坊」を意味する幼少時のあだ名だったという。アメリカ大陸の先住民には、文字の文化がなかったため、彼女については、後のイギリス側の史料に頼るよりない。彼女の存在は、アメリカ大陸の先住民のキリスト教化と、アメリカ大陸の植民地経営の成功を宣伝するために利用され、一種の建国神話のようにもなっている。
ポカホンタスは1595年頃に生まれたと推測されている。1607年、イギリス人たちはバージニアにジェイムス・タウンを建設するが、初期の植民地は食糧不足をはじめとして様々な苦難が襲い掛かった。ジェイムス・タウンも例外ではなく、1607年4月に辿り着いた最初の100名ほどの入植者のうち、翌年1月まで生きていたのは40人に満たなかったという。イギリス人たちは、ポウハタン族から強奪や脅迫などの手段によって奪おうとしたが、ポウハタン酋長は「あなた方は愛によって我々から得られるものを、どうして力で取ろうとするのか」と言ったという。この時期であれば、ポウハタン族は力でジェイムス・タウンを破壊することもできたはずだが、イギリス人にはポウハタン族からの支援がなされ、乗り切ることができた。
初期のバージニアでの植民地開発の指導者のひとりであったジョン・スミスは、その不逞行為によってポウハタン族に捕らえられ、酋長の前で処刑されかけたが、ポカホンタスが身を乗り出して助命嘆願してくれたおかげで無事生還できた、という話を残している。しかし、ジョン・スミスがその話を公にするようになったのはポカホンタスの死後のことであるとされ、作り話の可能性が高いと言われている。ジョン・スミスは、この一件をきっかけにポカホンタスが度々居留地を訪れ白人の子供たちと交流していたとも伝えるが、これも現実的ではない部分が多々あり、ジョン・スミスの作り話と言われている。
イギリス人による入植者が増えていくにつれて、ジョン・スミスは食糧調達の手段として、先住民の村から人質を取り脅迫して食料を奪うようになった。その恩を返すような振る舞いに、先住民も怒りイギリス人を襲撃して捕虜にするようになる。イギリス人は、ポカホンタスを誘拐して、イギリス人捕虜を解放させようと考えた。ポウハタン側が、和解の証としてポカホンタスを送り出したという説もある。イギリス人の居留地で暮らすようになったポカホンタスは、英語を学び、キリスト教の洗礼を受けさせられた。1614年にはタバコ園の経営者であったジョン・ロルフと結婚し名前はレベッカ・ロルフに変わった。ジョン・ロルフとの間にトーマスという子どもが生まれ、1616年にはイギリスに渡る。アメリカ先住民の酋長は西洋の王や皇帝のような君主とは全く異なるが、イギリスでは先住民族の姫として、植民地政策の宣伝に利用され、上流社交界では歓迎された。翌1617年、帰国の船旅の最中、病気にかかり死亡した。
【ストーリー】
1607年、北アメリカのヴァージニア周辺に到達したイギリスの船があった。そこには、先住民の集落が既に存在しており、イギリス船のニュー・ポート船長は航海の途中で反乱を起こして繋がれていたジョン・スミスに探索を命じ、先住民との接触を試みさせる。ジョン・スミスは、探索の途中で先住民に捕獲され、酋長の元に引き出された。
余所者を受け入れない先住民たちは、スミスを殺そうとしたが、酋長の末娘のポカホンタスが、助命を申し出たことで、一命を救われる。先住民の集落でともに、生活するようになったスミスは、ポカホンタスに愛情を感じるようになる。ポカホンタスもジョンに恋心を抱くようになっていたが、イギリス人たちがいつまでも居座って立ち退かないことに業を煮やした先住民とイギリス軍との間に戦いが起こる。
酋長から親子の縁を切られたポカホンタスは、イギリス側に"人質"として渡される。その上、スミスが溺死したと知らされ、悲嘆にくれる。やがて、イギリス紳士のジョン・ロルフから求婚されたポカホンタスは、それを受けるが、胸の中にはスミスの存在があった。そんな時、彼女はスミスがロンドンで生きていることを知る。
【感想】
環境映像のような美しい映像がイメージに残るが、逆に、そればかりが印象に残っているような気もする作品。ストーリーは起伏に乏しく、淡々と、静かに静かにストーリーは流れていく。あんまり万人向きではないかな、と思う。刺激の強い映像作品を見たい人向きではないが、その奥行きのある、木漏れ日や飛沫のような繊細な画を計算されつくした構成で描き出した素晴らしい映像は秀逸。それだけで、広い広い世界を舞台にした壮大な世界を感じさせてくれる。