恋におちたシェイクスピア(1998年)
DATE
Shakespeare in Love/アメリカ
監督 : ジョン・マッデン
<主なキャスト>
ヴァイオラ・デ・レセップス : グウィネス・パルトロー
ウィリアム・シェイクスピア : ジョセフ・ファインズ
フィリップ・ヘンズロー : ジェフリー・ラッシュ
ウェセックス卿 : コリン・ファース
ヒュー・フェニマン : トム・ウィルキンソン
ネッド・アレン : ベン・アフレック
エリザベス女王 : ジュディ・デンチ
クリストファー・マーロウ : ルパート・エヴェレット
ジョン・ウェブスター : ジョー・ロバーツ
……etc
【作品解説】
作品賞などアカデミー賞7部門を受賞した1998年最大の話題作。日本では1999年5月に劇場公開された。17世紀のイングランドを舞台に、貧乏文士のウィリアム・シェイクスピアと、貴族の令嬢ヴァイオラの恋愛物語とロミオとジュリエットの制作物語を絡めながら、コミカルに描いた良作。
ヒロインの名前がシェイクスピアの代表作「十二夜」のヒロインと同じだったり、名作と名高い1968年の映画版「ロミオとジュリエット」のオマージュと思われるシーンなどシェイクスピア作品へのリスペクトを感じられる。
【ウィリアム・シェイクスピア(1564年〜1616年)】
ウィリアム・シェイクスピアは、エリザベス朝時代のイングランドの劇作家、詩人。四大悲劇(『ハムレット(1600年〜1602年ごろ)』『リア王(1604年〜1606年ごろ)』『オセロ(1602年)』『マクベス(1606年ごろ)』)や、『ヴェニスの商人(1594年〜1597年ごろ)』『ロミオとジュリエット(1595年ごろ)』などの悲劇・喜劇、『リチャード3世(1591年初演)』などのような伝記的側面を持った作品など36の戯曲を世に残し、今なお根強い人気を残すイングランドの歴史上最も偉大な作家の一人である。シェイクスピア作品は映画の時代になると幾度の映画化されたが、近年製作されている映像作品では、現代的な解釈を加え、過去の作品とは全く印象の違う名作が生まれていると感じる。
シェイクスピアは1564年にイングランド中部の田舎町のストラトフォードで生まれた。父は皮手袋の職人として成功をおさめ、母はジェントルマンの娘で、裕福な家庭環境で育つことができたという。シェイクスピアは、地元のグラマースクールで学んだであろうと推測されているが、確たる学歴については分かっていないという。18歳のとき、26歳のアン・ハサウェイという女性と結婚しました。この時アンは妊娠3ヶ月だったという。
シェイクスピアは1585年には長男ハムネットと、次女ジュディスの双子を授かったが、劇作家としてロンドンで名をあげるまでの期間のことはほとんど資料が残っていないとされ、「失われた年月」などと呼ばれる。1592年ごろには俳優として活動する傍ら、作家としても活動をしていた。すでにその才能を発揮し、同業者から中傷を受けるほどの人気作家となっていた。1603年にエリザベス1世が崩御したのち、新国王のジェームズ1世がシェイクスピアの劇団の庇護者になることを約束するほど、シェイクスピアの劇団は名声を獲得していた。当時の劇団は、大衆劇場内での伝染病の蔓延を恐れて、冬場は閉鎖されていたので夏場はロンドンで公演し、冬場は故郷で家族と過ごしていたという。
1613年に筆を折り帰郷したシェイクスピアは、これまでの名声で得た資産で悠々自適の生活を送っていたが1616年の誕生日に、世を去ったとされる。ニシンからの感染症だったとも言われている。その7年後の1623年、同僚のジョン・ヘミングスとヘンリー・コンデルによって36の戯曲が集められ、最初の全集が刊行された。
【ストーリー】
エリザベス1世の時代のイングランド。ロンドンではペストが蔓延し、劇場の閉鎖が相次いでいた。スランプに陥ってしまったシェイクスピアは、ローズ座で上演する新作劇の準備を始めていた。同じ頃、とある資産家の令嬢ヴァイオラは貴族のウェセックス卿との結婚を控えていた。この結婚は、ヴァイオラの両親の希望で貴族との縁戚を結ぶための、意に添わないものだった。この時代、演劇の舞台には「風紀上の問題」を理由に女性が上がることはできなかった。若い女性の役は、声変わり前の男の役者が行っていた。劇団に、トマス・ケントを名乗る青年が劇団に加入する。トマスは抜群の演劇力で新作劇のロミオの役を得る。しかし、彼の正体は男装したヴァイオラだった。トマスの正体を知ろうとしたシェイクスピアは、トマスの正体と知らずヴァイオラと出会い、互いに一目惚れをする。やがて、トマスの正体がヴァイオラであることをシェイクスピアも知ることになる。互いの気持ちに気付いた二人は劇作家と役者の関係を超えて惹かれあい、逢瀬を重ねるようになる。結婚を控えたヴァイオラと既婚者のシェイクスピア。結ばれるはずのない2人のだったが、燃え上がった愛情の炎は静まることを知らなかった。シェイクスピアの筆は、今までにないほどに走り続け、喜劇の予定だった作品は、悲劇へと変更され、傑作「ロミオとジュリエット」が完成しようとしていた。
しかし、トマス・ケントの正体が女性であることが、当局に密告され、劇場は閉鎖されることになってしまう。トマス・ケントは姿を消し、もはや「ロミオとジュリエット」の上映は不可能かと思われた。ところが、ライバルでこれまでいがみあっていたカーテン座が協力を申し出、カーテン座の劇場を使って上映できることに。ロミオの役はシェイクスピアがすることに。ところが、ジュリエット役のサムに突然変声期が来てしまい、開演間際になって上演ができなくなる。上演日は奇しくもヴァイオラの結婚式の日。いてもたってもいられなくなったヴァイオラは劇場へ向かい、そこで上演が危うくなっていることを知る。興行主は、ヴァイオラをトマス・ケントとして、ジュリエット役で舞台に上げた。シェイクスピアとヴァイオラは迫真の演技で「ロミオとジュリエット」の悲劇を演じ切り、拍手喝采の中、舞台は成功に終わる――はずだったが、禁止されたはずの劇の上演を知った当局は兵を差し向けていた。
【感想】
映画「恋に落ちたシェイクスピア」の舞台となるエリザベス1世が統治した17世紀半ばから終わり頃のイングランドは、後の大英帝国の基礎が築かれ始めた時代。しかし、まだまだ後進国の時代であり、国内の安定と発展に力が注がれていた時代。そんな時代の”劇場”を舞台にしたとても面白い作品だった。どんな時代であっても、素晴らしいエンターテイメントに巡り合える幸福は何物にも代え難いものだと思う。
ラブコメディとしても歴史劇としても良質の一本。シェイクスピアの作品やエリザベス1世について少し調べてから観たら、随所にちりばめられた小ネタにも気付け、一層面白く感じられるかもしれない。ジュディ・デンチのエリザベス1世はインパクトが強く、彼女の登場で一気に持っていかれたような印象を受けた。