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コンクラーベ 天使と悪魔(2006年)





DATE

THE CONCLAVE/カナダ,ドイツ
監督 : クリストフ・スクルーイ

<主なキャスト>

マヌ・フローラ
ブライアン・ブレッスド
ジェームズ・フォークナー
ロルフ・カニース
ホルゲル・クンケル
ピーター・ギネス
       ……etc

目次
『コンクラーベ 天使と悪魔(2006年)』の作品解説
キーワード『コンクラーベ』
『コンクラーベ 天使と悪魔(2006年)』のストーリー
『コンクラーベ 天使と悪魔(2006年)』の感想


【作品解説】

 2006年制作の日本では劇場未公開作品。1458年に行われた、ローマ教皇カリウトゥス3世の死去に伴い、新たな教皇選出のために行われた教皇選挙(コンクラーベ)を題材にした作品。この時選出されたピウス2世の日記を基に、映画的な脚色を加えながら制作された。


【コンクラーベ】

 新しいローマ・カトリック教皇を選出しなければならなくなった時に行われる教皇を選出する為の選挙。また、教皇選挙が行われる場所と選挙者の枢機卿団のことも意味しているらしい。語源は、ラテン語の「共に」を意味するcum(クム)と「鍵」を意味するclavis(クラービス)を組み合わせた語で、「鍵と共に」「鍵がかかった」などと和訳されることもある。

 コンクラーベという言葉が教会で使われるようになったきっかけは、1268年の教皇選挙の時から、というのが通説になっている。イタリアのビデルボで教皇クレメンス4世が没し、18人の有権者が新たな教皇の選出を行おうとした。しかし、イタリア派とフランス派に分かれて意見がまとまらず、3年に渡って空位が続いた。いつまで経っても合意に至らない状況に業を煮やしたビデルボの人たちは、当時のフランシスコ会の総長、聖ボナベントゥラの勧めもあり、枢機卿たちを宮殿に閉じ込めて鍵をかけて外部との接触を断ち、武装した者たちに取り囲ませた。その結果、6人の枢機卿の妥協によって選挙が行われ、1271年にグレゴリオ10世が教皇に選ばれた。

 その後、速やかに新たな教皇が選出されるよう、1274年の第2リヨン公会議での議決に基づき現在のコンクラーベの原型が作られた。14世紀終わりごろから14世紀初めごろの教会大分裂の時代は枢機卿団のみが教皇選出の議決権をもつことに疑問が呈され、大議論となった。大分裂の終結後、改めて枢機卿団のみが教皇選出の権限を持つことが確認された。

 現在は教皇の死後か辞任後、バチカン市国のローマ教皇庁内にあるシスティナ礼拝堂で行われる。有権者は80歳未満の枢機卿だけで、定員は120名以内。投票総数の3分の2以上の票を獲得する必要があるり、投票の結果は選挙に使った投票用紙を燃やすストーブに繋がった煙突から昇る煙の色で外部に知らされる。コンクラーベのシステムは他国からの干渉の防止、秘密の保持などのために、長い時間をかけて練り上げられて現在に至っている。歴代の教皇は、選挙のシステムを変えることは許されても、後継者を指名することは許されなかった。


【ストーリー】

 1458年。ローマ教皇カリストゥス3世が危篤となっていた。カリストゥス3世の甥のロドリーゴ・ボルジアは、まだ20代半ばの青年でありながら枢機卿の一人であり教皇庁財務部副院長の地位にある。兄のペドロ・ルイスは教皇軍の総司令官である。しかし、スペイン人でイタリアに基盤が弱かったカリストゥス3世が側近を身内で固めるための人事であり、彼が死ねば、ロドリーゴも兄も後ろ盾を失い窮地に陥る。スペインに逃げろと忠告する者もいたが、枢機卿の一人として新たな教皇選出選挙――コンクラーベに参加することに。

 教皇が死んで建前上教会で最も地位が高いのは副院長のロドリーゴなので、コンクラーベを仕切るのは彼の役割だったが、経験不足を理由に、教会の重鎮であるデストゥトヴィル枢機卿に進行役を委ねることに。18人の枢機卿のうち、12票を獲得すれば教皇に選出される。候補は、経験豊富でフランス王との繋がりもあり、資産家のデストゥトヴィル枢機卿と、信仰心は厚いが激情家のピッコロミニ枢機卿。ロドリーゴにデストゥトヴィル枢機卿が近づき、「自分ならロドリーゴを守ってやれる。地位も保証してやる」と囁き、自らの陣営に引きずり込み、さらに他のスペイン人枢機卿の票を獲得するために協力するように迫る。

 苦悩するロドリーゴに、ピッコロミニはデストゥトヴィル枢機卿を信用するな、と忠告してくる。当初デストゥトヴィル枢機卿が優勢だと思われていたが、ピッコロミニ枢機卿も支持を伸ばしており、予想に反して拮抗していた。そのことに焦ったデストゥトヴィル枢機卿は、買収行為にまで手を染める。なりふり構わぬデストゥトヴィル枢機卿のやり方に疑問を感じるロドリーゴだったが、ピッコロミニ枢機卿に味方することを躊躇う理由があった。


【感想】

 1458年に行われたコンクラーベを題材にした歴史映画。時はコンスタンティノーブルの陥落(1453年)からほんの数年しか経っていないとき。ローマ・カトリック教会は世界最大の宗教組織の一つであり、一国に対しての影響力も大きい。そんな組織のトップを決める選挙なのだから、各々の思惑入り混じる、陰謀謀略飛び交う物になるのは想像に難くない。額を突き合わせてやり取りをしているか、聖堂で選挙戦をやっている場面ばかりで、あまり画の変化のない映画だったが、権謀術策入り混じる選挙戦を、ロドリーゴ・ボルジアを中心に丁寧に描いていて、派手なアクションなどはないが面白く見られた。

 主人公のロドリーゴ・ボルジアは後に教皇アレクサンデル6世となった。世俗化した教皇の代表的存在と位置付けられることになる人物である。ヒロインのヴァノッツァはチェーザレ・ボルジアの母となる女性。ロドリーゴを馬鹿にしヴァノッツァを誘惑するデラ・ローヴェレは、ロドリーゴのライバルであり、後の教皇ユリウス2世となる人物。彼らがどんな未来をたどることになるのか。この物語の続きにも興味がわいた。