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真珠の耳飾りの少女(2003年)





DATE

Girl with a Pearl Earring/イギリス,ルクセンブルグ
監督 : ピーター・ウェーバー
原作 : トレイシー・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女(木下哲夫 訳/白水社)

<主なキャスト>

グリート : スカーレット・ヨハンソン
ヨハネス・フェルメール : コリン・ファース
ピーター : キリアン・マーフィー
ファン・ライフェン : トム・ウィルキンソン
カタリーナ : エッシィ・デイビス
マーリア・ティンス : ジュディ・バーフィット
                     ……etc

目次
『真珠の耳飾りの少女(2003年)』の作品解説
キーワード『ヨハネス・フェルメール(1632年〜1675年)』
『真珠の耳飾りの少女(2003年)』のストーリー
『真珠の耳飾りの少女(2003年)』の感想


【作品解説】

 日本では2004年4月に劇場公開されたイギリス・ルクセンブルク合作の映画。1999年に刊行されたトレイシー・シュヴァリエの小説の映画化。ヨハネス・フェルメールの名画『真珠の耳飾りの少女』(通称『青いターバンの少女』)からイメージを膨らませた名作を見事に映画化していてる。この作品で主演を務めたスカーレット・ヨハンソンはゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞にノミネートされ、その映像美はアカデミー賞の撮影賞・美術賞・衣裳デザイン賞にノミネートされるなど高く評価された。




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【ヨハネス・フェルメール(1632年〜1675年)】

 ヨハネス・フェルメールは17世紀のオランダの画家。レンブラントとともにこの時代のオランダを代表する画家として知られるが、フェルメールの作品は現在分かっているだけで三十数点。知られていないものを含めてもせいぜい四十数点ほどしかないと言われ、極めて寡作な画家だったことがうかがえる。

 20世紀の有名な画家サルバドール・ダリは、フェルメールを高く評価し、著書の中で歴史的な芸術家の技術や構成力などを項目別に採点し、名だたる作家たちの中で最高点をつけたとされる。17世紀は、科学技術の発展が芸術にも大きな影響を与えた時期にあたり、描画の参考とするため「カメラオブスキュラ」という一種のピンホールカメラを用いていたといたともいわれます。フェルメールの作品は最先端の絵画技術を駆使して描かれたものだった。

 フェルメールは絹織物職人で居酒屋・宿屋を経営していた父レイニールのもとに生まれた。レイニールは、レンブラントが生まれる前年、画商として画家中心のギルド、聖ルカ組合に加盟していた。フェルメールは生涯を故郷のデルフトの町で過ごした。

 フェルメールは1653年にカタリーナ・ボルネスと結婚した。カタリーナの母マリーナは、「結婚の書類に署名はしないが、結婚に妨害もしない」と語ったとされる。その年の終りに聖ルカ組合に加盟している為、これ以前に画家としての修業を積んでいたと考えられているが、それはデルフト以外の場所でだったと言われている。2人は22年間の結婚生活の間に14人の子供が生れ、10人が成人したとされる。当時は子供の死亡率が高かったので、出産の人数が多かったのもうなずけるが、その割に、フェルメールが母と子をモチーフに選ぶことはなかったという。

 フェルメールの死後、多額の債務が残されていたとも言われている。カタリーナの母マリーナは裕福な資産家だったが、日々の生活に困るほど困窮している娘のために何も渡さなかったとも伝えられる。それは、負債の一部がカタリーナの浪費によって発生したものではなかったからではないか、などと推察する研究家もいる。世間一般の通説では良妻だったとされるが、カタリーナの兄はひどく金にだらしがなく、カタリーナの父は、マリーナや家族に虐待を加えていたとされ、そのことが彼女の性格形成に大きな影響を及ぼしていたとも言われる。

 フェルメールは1662年と1670年に聖ルカ教会の理事に選出されている。フェルメールは1675年にデルフトで死去。享年43歳。生前から高い評価を受けていた画家だったが、作品の少なさもあって、その死後200年以上忘れ去られた画家になっていた。1866年にフランス人トレ・ビュルガーが著した論文によってフェルメールは再評価された。トレ・ビュルガーは画商としても知られた人物だったので、再発見のシナリオによって利益を得ようとしたとも言われる。トレ・ビュルガーは約70点をフェルメール作としていたが、その後の研究によって減っていった。


【ストーリー】

 物語の舞台は1665年のオランダ、デルスト。タイル職人をしている父親が事故によって失明してしまい、グリートは家計を助けるために画家のフェルメールの家に奉公に行くことになる。フェルメールの一家は、気位の高い妻のカタリーナ、その母のマーリア、6人の子供という大家族。一つの作品を描き上げるのに時間がかかるフェルメールの家の家計は常に逼迫していた。カタリーナとの間には夫婦喧嘩が絶えずフェルメールは創作意欲を失いかけていた。

 そんな時、窓掃除をするグリートの生み出した光が、フェルメールに新たな創作のヒントを与えた。新作の制作に取り掛かるフェルメール。そんなフェルメールから高い美的感覚を持っていることを見抜かれたグリードは創作の手伝いをするようになった。フェルメールの家に奉公に出るようになってから、グリードには肉屋の息子ピーターという交際相手が出来ていた。グリードはピーターに対する好意と全く違うが、フェルメールに対して男性としての意識や崇敬のような念を抱くようになっていた。しかしそれは、傍から見れば主人と使用人の域を超えたパートナーとなっており、家族の中にグリートの存在が静かな波紋を起こしていた。


【感想】

 名画からそのまま出てきたかのようなスカーレット・ヨハンソンが凄く綺麗で、彼女の個人的魅力があふれた作品になっているように思う。物語はとても静かに進められ台詞もとても少ない。しかし、ストーリーの起伏のなさとかは本当にどうだっていい。台詞は少ないのに、それ以外のしぐさや目や表情で様々な意味が込められる。最後までとても美しかったのに、ひどく醜く惨めに感じられる場面もあり、演出面も優れていると感じる。派手なだけの作品より、ずっと染み渡る作品だと思うが、とても上品な名作だろうと思う。